皆さんがご存じのように天然に産出するダイヤモンドのほとんど90%以上は、工業用の品質であり、残り僅かが宝石用の品質となります。
鉱山から掘り出された土砂4トントラック20台分からわずか1カラットほどの割合しか産出しない為、どこの産地も莫大な設備投資をし、大がかりな採掘をしなければなりません。1カラット以上の大きなダイヤモンドに至っては更に少ない確率でしか産出しません。
そのようにして採掘される現場では、稀に大きくて高品質或いは非常にきれいな色を持ったダイヤモンドが発見され、話題となります。
ダイヤモンドというものは、いったいどんなものなのか、何故、様々な色を持ったダイヤモンドがあるのか、
そんな疑問が湧くと思います。
これからお話しすることはその疑問に少しでもお答えできるものと思います。
ひいては間違いのないダイヤモンドを選ぶ為の一助となることを願っています。
ダイヤモンドは純粋に炭素=Cのみで出来ている純粋な結晶であることはご存知の通りです。
しかしながら、そこに僅かな違いがあり、それにより輝きや色に差異が出来ていることは意外と知られていません。
実はダイヤモンドにはタイプ=型があるのです。
化学的に純粋かつ構造的に完璧なダイヤモンドは無色で完全に透明ですが、現実にはほとんどジェムサイズの天然ダイヤモンドは完璧ではありません。
純粋なダイヤモンドは完全に無色透明でありながら、格子間に不純物や構造欠陥を持つことにより着色の原因となります。(結晶に含まれるこれらの不純物が、光吸収に影響を与えることによります)
ダイヤモンドのタイプ赤外分光計により原子レベルで結晶格子の炭素原子、不純物などを測定、検出することにより決定するのです。
ダイヤモンドの色もこのタイプにより決まります。
ダイヤモンドのタイプは肉眼で見ても中々分りませんが、色は分ります。
そしてダイヤモンドは着色(色相と強度)の度合いに応じて、その価値が高まったり低くなったりします。
たとえば、ほとんどのホワイトダイヤモンドは黄色の色相がある場合、価格は安くなります
強烈なピンクやブルーダイヤモンド(例えばホープダイヤモンドなど)は劇的に価値が上がります
すべてのカラーダイヤモンドのうち、赤のダイヤモンドは最も稀で、有名なものは両手の指の数程、と言っても過言ではありません。
ダイヤモンドはスチールグレー、白、青、黄色、オレンジ、赤、緑、ピンク、紫色、茶色、黒など様々な色を持ちます。
この色はどうしてつくのか、
そこにはダイヤモンドのタイプというものが深く関わって来ます。
ダイヤモンドは科学的性質に応じて、2つの主要なタイプといくつかのサブタイプに分類されています
それでは、これからこのダイヤモンドのタイプ(型)と色についてお話しましょう。
天然ダイヤモンドはしばしば単一の石の中に異なったタイプを持った混合物で、ダイヤモンドのタイプ(型)は、それらの化学的不純物のレベルや種類によって科学的に分類する方法です。
ダイヤモンドのタイプ
ダイヤモンドは結晶内に窒素を含むか否かにより2種類のタイプがあり、更にその中が2つのタイプに分類されます。つまり全部で
Ia型
Ib型
IIa型
IIb型
の4種類に分けられます。
I型(窒素を含むタイプ)
I a型・・・窒素原子が集合体を作っているもの。大抵の無色から黄系(ケープ系)ダイヤモンドのがこれにあたり、最も産出の多いものです。
I b型・・・窒素原子が単独で存在しているもの。ファンシーインテンスイエローなどの濃い黄色系のダイヤモンドを生みます。
II型(窒素を含まないタイプ)
II a型・・・窒素やホウ素などの不純元素を含まない無色のダイヤモンドです。希少性が非常に高いタイプです。
II b型・・・不純元素としてホウ素を含むもの。電気を通す特異な性質を持ち、ファンシーブルーのダイヤモンドが属するタイプで有名です。希少性が非常に高いタイプです。
タイプIa及びIbは赤外吸収スペクトルにより決定することができます。
最も一般的なクラスのタイプIは一般的に不純物として0.1%の濃度で窒素を含んでいます。
Ia型ダイヤモンドは、すべて天然ダイヤモンドの約98%を占めています。
0.3%(3000 ppm)までの窒素不純物は、、炭素格子内比較的に広範囲にクラスター化し、この窒素クラスタの吸収スペクトルは青色光を吸収することによりダイヤモンドを淡黄色またはほぼ無色に見せるのです。
ほとんどのIaダイヤモンドはIAAとIAB材料の混合物です。 これらのダイヤモンドは、以前から知られているダイヤモンドに富む領域にちなんで名付けられたケープシリーズに属し、南アフリカにあるケープ州に豊富に産出します。
Ia型ダイヤモンドは、N2とN3窒素により強い415.5 nmの(N3)のメインバンドと弱くはあるが478 nmの(N2)、465nmで、452ナノメートル、435ナノメートル、423ナノメートルで吸収帯(ケープ・ラインを )を表示します 。
彼らはまたN3の窒素により長波長紫外線により、青色の蛍光を発します(N3は目に見える色を損なわない)。
ブラウン、緑、または黄色のダイヤモンドは504nmの吸収ラインを示します。時には、537 nmおよび495 nmの吸収ラインを伴うこともあります。
ブルーグレー色もIa型ダイヤモンドで発生し、ホウ素とは無関係な場合があります。
TypeⅠaAは窒素原子がペアであり、
これらは、ダイヤモンドの色に影響を与えません。
TypeⅠaBは窒素原子が偶数の集合体をなし、これらは、黄色から茶色の色合いをもたらします。
Ⅰb型ダイヤモンドは全ての天然ダイヤモンドの約0.1%程しか産出せず非常に希少なものです。
これらは、最大0.05%(500 ppmの)窒素を含むが、不純物がより拡散され、原子は結晶全体に分散されています。
そして窒素原子が、結晶全体に単独で存在(ペアリングまたはグループ化されていない)している場合は強烈な黄色または時折茶色の色合いを石に与えます(Ib型)。
希少なカナリアダイヤモンドはこのタイプに属し、天然ダイヤモンドのわずか0.1%を占めています。
(窒素を含むほとんどすべてのHPHT 合成ダイヤモンドは Ib型のものです)。
彼らはまた、特徴的な蛍光性と可視吸収スペクトルを有します。
TypeⅠbダイヤモンドは青に加えて、緑色の光を吸収し、Ia型ダイヤモンドより強いまたはより暗い黄色や茶色の色を持っています。
ダイヤモンドは濃い黄色または時折茶色の色合いをもたらします。
タイプIIのダイヤモンドは、測定可能な窒素不純物がありません。
タイプIIのダイヤモンドは、タイプIのダイヤモンドとは異なり、赤外線の異なる領域で吸収し、225 nm以下の紫外線を透過します。
彼らはまた、異なる蛍光特性を持っていますが、識別可能な可視吸収スペクトルはありません。
結晶は形状が大きく、不規則でシャープな形で産出することが多く タイプIIダイヤモンドは、より長い期間非常に高い圧力下で形成されるのです。
IIa型ダイヤモンドは、すべて天然ダイヤモンド(宝石ダイヤモンドの1.8%)の1から2パーセントを占めています。
これらのダイヤモンドは、ほとんどまたは完全に不純物を欠いていて、その結果、通常は無色であり、最高の熱伝導率を持っている
。
*今年(2016年2月)になって、アフリカのアンゴラのLUCAPA鉱山(表沙鉱床)で発見され、話題となったダイヤモンドもこのタイプⅡaのものでした。
404.2カラット、Dカラー,Flawlessのこのダイヤモンドはアンゴラで発見された最大の大きさを持ち、1600万ドル(カラット当たり39,580 ドルで取引されたのです。
*今年(2016年2月)になって、アフリカのアンゴラのLUCAPA鉱山(表沙鉱床)で発見され、話題となったダイヤモンドもこのタイプⅡaのものでした。
404.2カラット、Dカラー,Flawlessのこのダイヤモンドはアンゴラで発見された最大の大きさを持ち、1600万ドル(カラット当たり39,580 ドルで取引されたのです。
IIa型ダイヤモンドは結晶成長時の塑性変形が原因の構造異常により、ピンク、赤、または茶色に着色することができます
します。IIa型ダイヤモンドはオーストラリアの生産の大部分を構成しています。
時折IIa型ダイヤモンドは、地球の表面に向かって押し出されている間、圧力および張力が成長時の塑性変形により四面体の結晶構造に不完全を生じさせ構造的異常を引き起こします
。
これらの欠陥が宝石に黄色、茶色、オレンジ、ピンク、赤、または紫色を付与したのです。
紫色のダイヤモンドは、結晶格子の歪みと高い水素含有量の組み合わせによって引き起こされます。
TypeⅡaダイヤモンドは高圧高温(HPHT)プロセスによりその結晶の変形を「修理」し、ダイヤモンドの色の多くまたはすべてを削除することが出来ます。
タイプIIaダイヤモンドはオーストラリアの生産の大きな割合を構成しています。
現在はこのHPHT 処理されたダイヤモンドは刻印或いは鑑別により、厳しく管理され、消費者に告知することになっています。
CVDプロセスを用いて成長した合成ダイヤモンドは、典型的には、このタイプに属します。
IIb型ダイヤモンドは、すべての天然ダイヤモンドの約0.1%を占め、最も希少で高価な天然ダイヤモンドで優れた電導性を持っています。
更にTypeⅡbダイヤモンドはTypeIIaと比べて窒素不純物は非常に低いレベルであり、代わりにホウ素不純物を豊富に含んでいます。
ホウ素の吸収スペクトルは、赤、オレンジ、黄光を吸収し、IIb型ダイヤモンドにライトブルーやグレーの色をもたらします。有名なものはホープダイヤモンドですね。最近ではJosephine of Bule Moonなどもこれにあたります。。
また低い量のホウ素の不純物は無色を示すこともあります。
*GIAラボは、ロシアのペテルスブルクの企業が生産したHPHTによるブルーダイヤモンドを鑑別したと発表しました。
エメラルドカット、5.03カラットのタイプⅡbとのことです。
また、HPHTにより作られた最大の研磨済み人工ダイヤモンドは10.02カラット、Eカラー、VS1の品質を持つもので、2015年に香港のIGIにより報告されています。
*GIAラボは、ロシアのペテルスブルクの企業が生産したHPHTによるブルーダイヤモンドを鑑別したと発表しました。
エメラルドカット、5.03カラットのタイプⅡbとのことです。
また、HPHTにより作られた最大の研磨済み人工ダイヤモンドは10.02カラット、Eカラー、VS1の品質を持つもので、2015年に香港のIGIにより報告されています。
天然ブラックダイヤモンドは、グラファイトなどの他の材料の微視的な黒またはグレーの介在物または硫化物および/または顕微鏡的亀裂によりによって引き起こされます。最近は放射線処理されたブラックダイヤモンドが安価に市場に多く出回っていますが、これらの多くは工業品質のダイヤモンドを処理したものです。
少し難しいお話になってしまいましたが、ダイヤンモンドには色々な種類があるんだ,ということはおわかり頂けたのではないでしょうか。
そして、大きくて品質の良いもの、ファンシーカラーダイヤモンドなどが以下に希少なものであるか、ということはご理解いただけたと思います。
現代は様々な方法で人工的にダイヤモンドが生産される時代です。また、様々な方法で天然ダイヤモンドに処理が施され、市場に出回っています。
ダイヤモンドに携わる業界はこぞってそれらの技術革新に対処する努力をし、情報の開示に努めています。健全なる宝石市場を守り、消費者の信頼を裏切らない為に頑張ってほしいと思います。